幼児の脳死移植 どう虐待判断 [ニュース]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130612-00000049-mai-soci

 改正臓器移植法に基づく初の6歳未満男児からの脳死移植が15日で1年を迎えるのを前に、男児の脳死判定を実施した富山大病院(富山市)の塚田一博病院長(62)と治療を担当した医師の一人が毎日新聞の取材に応じた。2人は、家族の思いに応えることができたとしたうえで、医療機関の負担軽減のため、虐待の有無を判断する第三者機関の設置の必要性を訴えた。男児の臓器提供で治療を担当した医師が取材に応じたのは初めて。

 男児は低酸素性脳症に陥り、法的脳死判定を経て、心臓、肝臓、腎臓、角膜を提供した。2人は「家族の意思を尊重できた」(塚田病院長)、「救命だけを考えた。臓器を残そうなどと考えていなかった」(医師)と移植の経緯を振り返った。

 法律で定められている虐待の有無の確認について、医師は「一番難しい問題だ」と主張。当時、院内の児童安全保護委員会で協議し、13人のメンバー全員が「虐待はなかった」と一致したが、医師は「一人でも異論があった場合、臓器を提供したいという男児の家族の思いが実現するのだろうかと不安になった」と心境を明かした。そのうえで、「判定する第三者機関ができれば、主治医や病院の負担は減る」と話した。

 医師は脳死移植について「普段の医療の一つの選択肢でしかない。脳死や臓器提供だけでなく、救命治療など、子どもが『生きる』ための議論も深めてほしい」と訴えた。

 塚田病院長は今春、就任。医師は匿名を条件とし、2人は「できる範囲で(国民の疑問などに)答える社会的責任もある」(塚田病院長)として取材に応じた。

 改正臓器移植法では、虐待を受けた児童の臓器が提供されることのないよう医療機関側に虐待の疑いの有無の確認を求めており、院内に虐待防止委員会などの設置が義務づけられている。

 男児の臓器提供について、厚生労働省の脳死移植に関する検証会議は今年2月、救命救急や脳死判定などの手続きは「妥当だった」とし、虐待の可能性もなかったとする結論を出した。【吉田卓矢、大森治幸】

 ◇一問一答

 --昨年の脳死移植をどう評価するか。

 医師 男児がいかに生きる方向に持っていけるか、真剣に取り組んだ。

 --虐待の有無の判断をどう考えるか。

 医師 一番難しい問題だ。例えば、かなり昔に虐待された形跡があるが、現在は親が改心し大事に育てている場合はどうか。判断が分かれる場合もありうる。

 --どうすれば、脳死移植への理解が深まるか。

 病院長 理解は進んできたと思う。我々は常に家族の希望に沿えるよう準備し、いざという時に粛々と対応するだけだ。

 医師 小児医療は、脳死移植だけでなく、生から死まで一連の軸で考えなければならない。社会全体で議論する必要がある。

 --小児の移植医療で改善すべき点は。

 医師 虐待の有無の問題は、児童相談所も苦しい判断を迫られる。判断を間違えると社会から厳しい批判を浴びる。判定をする第三者機関ができれば負担は減る。ただメンバーは常にスタンバイ状態で、プレッシャーも相当なものになる。

 【ことば】富山大病院での6歳未満男児からの脳死移植

 15歳未満からの臓器提供を認めた改正臓器移植法(2010年7月施行)に基づき、12年6月、実施。脳の回復力が強いため、脳死判定で特に厳格な判断基準を適用した6歳未満として初のケースだった。男児は富山大病院に搬送後、家族が臓器提供を申し出て、法的に脳死と判定された。同法は18歳未満の場合、虐待の疑いの有無の確認を求めているが、富山大病院と児童相談所の間での情報提供を巡って連携が一時うまくいかなかった。
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