中堅・中小企業の現実的なセキュリティ対策を考える(@IT) [ニュース]

http://rdsig.yahoo.co.jp/rss/l/headlines/sci/zdn_ait/RV=1/RU=aHR0cDovL2hlYWRsaW5lcy55YWhvby5jby5qcC9obD9hPTIwMTcwMjA2LTAwMDAwMDA4LXpkbl9haXQtc2Np

 昨今、標的型サイバー攻撃が多発し、各ベンダーがしきりに「入口/内部/出口」における多層防御の必要性を訴えている。だが、巧妙で多岐にわたる攻撃から組織を守ろうとすれば、初期アセスメントからツールの実装、運用費までを含めて、数億円規模の投資が必要になることもある。果たして、それほどの余力を持つ企業がどれだけあるだろうか? また、個々の企業が独自に対策を進める場合、複数ベンダーのソリューションを適切に組み合わせるノウハウと膨大な作業も求められる。

 このような課題は特に中堅・中小企業で顕著であり、多くの企業が解決策を探しあぐねているのが現状である。こうした状況を受け、筆者の所属するニュートン・コンサルティングら8社は、2016年にベースラインAPT対策コンソーシアム(以下、BAPT)を設立した(詳細は記事末尾に記載)。本連載では、BAPTの活動から見えてきた中堅・中小企業の課題に対する“現実解”を紹介する。

●「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」を物差しにして考えてみる

 セキュリティ対策のベースラインは業界や企業によって異なるため、これという解を示すのは難しいが、経済産業省が公開した「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」は1つの物差しになる。そこで今回から複数回にわたって、このガイドラインをベースに、経営層や情報システム部門の役割、技術的な対策、構築すべき運用ルールなどを解説していくことにしよう。

 初めに概要を説明しておくと、サイバーセキュリティ経営ガイドラインは、経済産業省が2015年12月に初版を公開し、2016年12月に改訂した企業向けの指針である。その名の通り、企業経営の観点からサイバーセキュリティに求められる考え方などを分かりやすく示している。ガイドラインの構成は以下の通りである。

●サイバーセキュリティ経営ガイドライン概要

1.はじめに

2.サイバーセキュリティ経営の3原則

3.サイバーセキュリティ経営の重要10項目

付録

A:サイバーセキュリティ経営チェックシート

B:望ましい技術対策

C:他の関連ガイドライン等との関係

D:用語の定義

 非常にシンプルな構成だが、このガイドラインを読み解くに当たって、前提として知っておいた方がよい点が2つある。1つは、本ガイドラインはほぼ全ての内容が経営者に向けて書かれているが、付録の「望ましい技術対策」など、一部異なる箇所もある点である。もう1つは、経営者をセキュリティの面から支えるCISOが存在する前提で書かれているという点である。どの組織にもCISOが存在するわけではないから、組織によってはセキュリティを担当する執行役員などに読み換える必要がある。

 これは既にさまざまな場所で言い尽くされていることではあるが、サイバー攻撃はもはや企業経営を揺るがすインパクトを持つようになっている。最悪の場合、役員クラスの引責辞任はもちろん、特別損失や対策費用などで数百億にのぼる被害をもたらすことも少なくない。また、そのような事態が起これば、必ず経営者自身が記者会見などで説明責任を果たすことが求められる。そうした事態に企業が対処できるようにすべく、本ガイドラインが策定されたわけである。

●ガイドラインをどう活用すればよいのか

 さて、では本ガイドラインによれば、どのような対策に、どれだけの投資をすれば十分なのだろうか? ガイドラインの冒頭「サイバーセキュリティガイドライン・概要」には、「経営者が認識する必要がある3原則」として以下のような記述がある。

●認識する必要がある3原則

(1)セキュリティ投資は必要不可欠で経営者の責務。経営者が対策を推進すべし

(2)子会社、系列企業だけでなく ビジネスパートナー等も含めた対策が必要

(3)平時からのセキュリティ対策に関する情報公開など関係者との適切なコミュニケーションが必要

 実は初版ではここに、「セキュリティへの投資に対する明確なリターンの算出はほぼ不可能、経営者自身が決めて推進すべし」という強烈なメッセージが掲げられていた。筆者はこの初版のメッセージこそが経営者が最初に認識すべき点であり、先の問いへの答えであると考えている。というのも、精緻な費用対効果を求めようとして投資が進まないケースが実際に多く、現場が最も苦労している点の1つとなっているからだ。筆者自身、経営層を説得できないばかりに、対策が遅遅として進まない例をたくさん見てきた。

 いずれにせよ、これらの3つの認識を踏まえた上で、経営者は以下の「サイバーセキュリティ経営の重要10項目」について担当者に指示せよ、というのが本ガイドラインの大まかな趣旨である。指示する先は主にCISOや情報システムの部門長などになるだろう。

●重要10項目

1.リーダーシップの表明と体制の構築

(1)サイバーセキュリティリスクの認識、組織全体での対応の策定

(2)サイバーセキュリティリスク管理体制の構築

2.サイバーセキュリティリスク管理の枠組み決定

(3)サイバーセキュリティリスクの把握と実現するセキュリティレベルを踏まえた目標と計画の策定

(4)サイバーセキュリティ対策フレームワーク構築(PDCA)と対策の開示

(5)系列企業や、サプライチェーンのビジネスパートナーを含めたサイバーセキュリティ対策の実施及び状況把握

3.リスクを踏まえた攻撃を防ぐための事前対策

(6)サイバーセキュリティ対策のための資源(予算、人材等)確保

(7)ITシステム管理の外部委託範囲の特定と当該委託先のサイバーセキュリティ確保

(8)情報共有活動への参加を通じた攻撃情報の入手とその有効活用のための環境整備

4.サイバー攻撃を受けた場合に備えた準備

(9)緊急時の対応体制(緊急連絡先や初動対応マニュアル、CSIRT)の整備、定期的かつ実践的な演習の実施

(10)被害発覚後の通知先や開示が必要な情報の把握、経営者による説明のための準備

 「重要10項目」には、考え方に加え、対策例やシナリオが示されている。これを見て「具体性に欠ける、さらに詳細なガイドが欲しい」と感じる方もいるだろうが、そもそもこれは経営者向けのガイドラインであるから、当初からそこまで記載する想定はしていないのであろう。現場部門の対応については、「付録B」の望ましい技術対策に加え、IPA(情報処理推進機構)が公表した解説書やPCI DSS、Critical Security Controlなどが参考になる。

 ガイドラインの全体像を図示すると以下のようになる。本ガイドラインは原則PDCAを念頭に記載されており、その上で経営層が重要10項目をどのように推進するかが肝である。なお、経営者自身が具体的に進めるのではなく、経営者が10項目についてCISOに指示し、CISOの指揮の下で遂行を行うというケースも当然あり得る。

●中堅・中小企業はまずなにを実施すべきなのか?

 というわけで、ガイドラインの構成と経営者が認識し指示すべき項目を概説した。では、指示を受ける側は具体的に何から取り組むべきなのだろうか?

 これは重要10項目の項番通り進める形でよい。なぜなら、重要10項目は土台作りにあたる(1)(2)、分析・評価に基づく運営の枠組みを示した(3)~(5)、分析・評価に基づく被害を未然に防止する対策である(6)~(8)、被害が顕在化した際の項目(9)(10)と、実際に取り組む際の順番通りに記載されているためである。

 例えば、土台と位置付けられる項目「(1)リスクの認識、対応」であれば、セキュリティポリシーを策定する。ポリシーというと、ともすれば中堅・中小企業にとってはハードルが高いように感じられるかもしれないが、「要はサイバーセキュリティになぜ取り組むのか」という理由を言葉にして組織内に示せばよい。

 つまり、サイバー攻撃を受けた場合、どのような最悪の事態が想定されるか。Webサイトが改ざんされたら? 個人情報が漏えいしたら? メールやインターネットが使えなくなったら?――サイバー対策を実施していないと、自社ビジネスがどのような状態になるのかを思い浮かべ、なぜ対策に取り組むのか、どのような体制で取り組むのかを言葉にすれば、自ずとそれがポリシーになるはずである。

 「(2)管理体制の構築」では、サイバーセキュリティに対する組織の責任者と管理体制を明確にする。責任者はCISOなどと呼ばれることが多いが、重要なのはCISOという呼称ではなく、責任の所在を明確にすることである。管理体制については、組織横断的な委員会のようなものを設置し、年に数回、直接顔を合わせ情報共有する場を設けることが望ましい。これはいわば企業経営の土台であり、多少の違いはあれど、既に品質管理や製品開発などで同様の仕組みが導入されている組織も多いはずである。

 少々難易度が上がるのが、次の項目(3)~(5)の分析・評価に基づく枠組みの部分だ。「(3)サイバーセキュリティリスクの把握と実現するセキュリティレベルを踏まえた目標と計画の策定」では、守るべき資産やサイバー攻撃が発生した場合のビジネスへの影響を特定し、具体的な対策につなげていく。

 サイバーセキュリティリスクの把握に当たっては、一般的にリスク分析やビジネスインパクト分析などを実施することになるが、ここで陥るワナがこの分析を“詳細に実施してしまう”ことだ。その結果、分析だけで疲弊してしまったり、分析で一定の結果が出たところで推進力が弱まったりして、具体的な対策につながらないケースが少なくない。

 特に潤沢なリソースがあるわけではない中堅・中小企業はとっては、詳細な分析はそもそも困難である。だからといって、この分析がその後の現場でのルール作りやセキュリティ機器の導入などに掛かるリソースやコストに跳ね返ってくることになるから、おざなりにもできない。ここが多くの中堅・中小企業の大きな悩みどころである。ここは非常に重要な部分であるから、分析や評価の実施方法については、次回詳しく解説することにしたい。



●著者プロフィール
内海 良(うちみ りょう)
ニュートン・コンサルティング株式会社 プリンシパルコンサルタント ベースラインAPT対策コンソーシアム(BAPT)のセキュリティコンサルティング支援メンバー。

送料無料/経営としてのサイバーセキュリティ すべてがつながる時代に向けて/NTTサイバーセキュリティ研究会
価格: 1,620円 レビュー評価:0.0 レビュー数:0
著者NTTサイバーセキュリティ研究会(著)出版社日経BP社発行年月2015年10月ISBN9784822271763ページ数247P9784822271763内容紹介エシカル(正義の)ハッカーの素顔、IoT時代に向けたセキュリティ最前線、米国の最新セキュリティ政策。※本データはこの商品が発売された時点の情報です。
Supported by 楽天ウェブサービス




サイバーセキュリティ講座 | 【第3回前編】投資効果が算出不可能?「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」とは | エヌシーアイ株式会社



因幡万葉歴史館のホテル・旅館情報の森
四郎ヶ浜ビーチホテル・旅館大特集
角田市のホテル・旅館お勧めはここ!
竹富島の格安ホテル・旅館
くじらの博物館のホテル・旅館お勧めはここ!
新宿の最新ホテル・旅館情報。
十和田八幡平国立公園ホテル・旅館大特集
然別湖のホテル・旅館お勧めはここ!
函館山ホテル・旅館大特集
登別温泉のホテル・旅館お得情報
刺身 日帰りのホテル・旅館
岩沼市の激安ホテル・旅館
お伊勢浜海水浴場ホテル・旅館大特集
前橋市のホテル・旅館お勧めはここ!
新座市ホテル・旅館大特集
妙高戸隠連山国立公園のホテル・旅館を探してる?

nice!(0) 

nice! 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。