女児救えたか 機器承認に壁 [ニュース]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150116-00000107-san-soci

 ■海外OKも国内未承認

 心臓移植までの間、低下した心機能を補い、患者の命をつなぐ補助人工心臓は、海外で使用可能な医療機器なのに日本で使用できない「デバイス・ラグ」の象徴とされてきた。特に20キロ未満の子供が安全に使える小児用補助人工心臓は、今も国の承認を得られていない。重い心臓病「拡張型心筋症」を患い、心臓移植に生きる望みを託しながら13日に大阪大病院で脳死と判定された6歳未満の女児は、そんな「デバイス・ラグ」の犠牲者でもあった。

 「国内では、子供用の補助人工心臓が使用できず、やむなく一時的な簡易の機械を使用する選択肢しかありませんでした」「命をつなぐはずの補助人工心臓が娘の命を奪う結果となってしまいました」

 女児の両親は14日、日本臓器移植ネットワークから13日に発表された臓器提供への思いを述べたコメントには、一部削除された部分があるとして、大阪大病院を通じ、改めてコメント全文を発表。そこには日本の医療が抱える問題に対する憤りと、二度と同じ事態が起きてほしくないという切なる思いが記されていた。

 ◆血栓できやすく

 補助人工心臓はもともと、ポンプの回転軸などに血栓(血の塊)が発生することがあり、頭の血管で詰まると、脳梗塞などを引き起こす危険がある。

 子供は大人に比べ血流量が少なく、血液を流すポンプの回転数を下げる必要があるが、それは血栓の危険性を高めることになる。簡易型の補助人工心臓は長期使用を前提としておらず、特に血栓ができやすい。

 しかし国内では小さな子供が安全に使える補助人工心臓は承認されていない。女児の両親が望んでいたのは、承認に向け治験が行われているドイツ・ベルリンハート社製の小児用補助人工心臓の取り付けだった。

 ◆今夏…間に合わず

 同社の小児用補助人工心臓は患者の体に合わせ6種類のポンプがあり、体重2キロの子供から使用可能だ。欧米での使用実績も豊富で、日本でも使用を求める声が医師や患者から上がっていたが、市場規模が小さく利潤が出ないとして、多くの企業は長い間、導入に尻込みしていた。

 東京大病院、大阪大病院、国立循環器病研究センターで承認に向けた治験が始まったのは平成24年。治験を統括する東京大の小野稔教授(心臓外科)によると、結果は上々で1年以上の使用に耐えられるとの見通しが出ており、今夏の承認が期待されている。

 しかし、女児には間に合わなかった。

 ベ社の小児用補助人工心臓は、治験がほぼ終了した今も、命に関わる患者には特例的に使用が認められる場合があるという。大阪大病院によると、女児は心不全が急速に進んだため、最初にすぐ付けられる簡易型補助人工心臓を使用。その後、ベ社の小児用補助人工心臓への切り替えを検討していたが間に合わず、血栓が脳に飛んだという。

 小野教授は「小児用補助人工心臓が承認されていれば、すぐに取り付けることができた。治験がもう1年早く始まっていれば、女児は救われていたかもしれない」と指摘。日本小児循環器学会前理事長で東京女子医大の中西敏雄教授(循環器小児科)は「女児はデバイス・ラグの犠牲者であり、臓器移植に対する社会の理解が進まないことの犠牲者でもある」と話した。
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