夢と自覚 明晰夢に誘導成功 [ニュース]

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140512-00000032-jij_afp-sctch

【AFP=時事】体に無害な電流を用いて個人の睡眠を変化させ、強い影響力を持つ種類の夢の「明晰(めいせき)夢」を見られるようにする実験に成功したとの研究論文が11日、英科学誌「ネイチャー・ニューロサイエンス(NatureNeuroscience)」に掲載された。

睡眠不足で脳にダメージ?スウェーデン研究

 論文を発表した独ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学フランクフルト(J.W.GoetheUniversityFrankfurt)のウルズラ・ボス(UrsulaVoss)氏率いる研究チームによると、今回の発見は、思想家らを数千年にわたり魅了してきた分野の「夢を見るメカニズム」を理解する手掛かりになるだけでなく、精神障害や心的外傷による悪夢の治療の助けになる日が来るかもしれないという。

 明晰夢は、2種類の意識の中間にあたる段階だと多くの心理学者は考えている。

 つまり明晰夢は、いわゆるレム(急速眼球運動、REM)夢と、抽象的思考などの認知機能が活動を始める覚醒との中間に位置する。レム夢は当面の現在に関係する夢で、過去の記憶や今後予測される未来の出来事は使われない。

 人間特有の状態と考えられている明晰夢の中では、二次的な意識の要素がレム夢と結びつく。

 明晰夢の特徴は、自分が夢を見ていることに気付き、夢の筋書きをコントロールできる場合があることだ。

 例えば、夢で攻撃者を撃退したり、悲惨な事故を回避したりできるわけだ。


 ボス氏の研究チームは、経頭蓋交流電気刺激(tACS)と呼ばれる技術を用いて、明晰夢が起きる原因を調べた。

 tACS法の装置は、電極が付いた2つの小さな箱で構成されており、頭部に隣り合わせに設置されたこれらの箱から、微弱な低周波電気信号が脳全体に送られる。

 研究チームは18歳から26歳までの女性15人と男性12人の被験者を採用し、睡眠検査室で最大4夜を過ごさせた。

 研究チームは、被験者がレム睡眠を2~3分間経験した後、tACS装置または電流を流さない「疑似」の手順を約30秒間作動させた。電流は、被験者が目を覚まさないように知覚のしきい値を下回る大きさに設定した。

 その後、被験者を起こし、それまで見ていた夢の内容を尋ねた。

■夢をコントロールする

 ボス氏は、AFPの取材に「夢の報告内容はみな同様で、被験者の大半が『自分自身を外側から見ている』ようだったと話しており、夢はまるで画面に映った映像のように外側から見られた」と語る。

「また、被験者は自分が夢を見ていることを自覚していたという報告が多く寄せられた」

 被験者に対する実験は、交流電流の周波数を2ヘルツ、6ヘルツ、12ヘルツ、25ヘルツ、60ヘルツ、100ヘルツと変えて行われた。

 ボス氏は「効果は25ヘルツと40ヘルツの場合のみ観察された。これはどちらもガンマ周波数帯下位域の周波数だ」と指摘する。

「この周波数帯は自覚意識に関連しているとされてきたが、これまで因果関係は確立されていなかった。今回の研究でそれが確証された」


 被験者を25ヘルツで刺激すると「夢の筋書きをコントロールする部分の採点が高くなった。これは、被験者が夢の中の行動を自在に変えることができたことを意味している」とボス氏は付け加えた。

 論文には、被験者が自分が見た夢の内容について語った話がいくつか挙げられている。

 そのうちの1つは次のようなものだ。「私は長時間、車を運転していた。すると、以前に来たことのない場所に着いた。そこには人がたくさんいた。何人か知り合いがいるかもしれないと思ったが、皆が険悪なムードだったので、私一人で別の部屋に移動した」

 電池式のtACS装置は、それぞれ脳の前頭頂部と側部に位置する前頭野と側頭野に電流が流れるように装着された。

 前頭側頭に作用するtACSは、統合失調症や強迫神経症で指摘される脳ネットワークの機能不全を修復する助けになる可能性があると論文は示唆している。

 tACSは、レム睡眠中に適用すると、心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者が夢の筋書きを自在にコントロールできる立場に自分を置くことで、頻発する悪夢を克服する助けになる日が来るかもしれない、と論文は説明している。

 tACS装置自体は、研究目的のためだけに使用されるように設計された医学的発明品と認識されている。

 だがボス氏は、好むと好まざるとにかかわらず、睡眠時に誰でも明晰夢を見られるようにする同様の装置が一般消費者向けに考案される日が来ることは避けられないと思われると述べている。

 ボス氏は「これは私個人としてはどうでもいいことだが、同様の装置が世に出回るのにそう長くはかからないと確信している。だが脳への刺激は常に、医師による注意深い監視の下で行うべきだ」と注意を促している。【翻訳編集】AFPBBNews
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