シャープ 液晶で再建進むか [ニュース]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130515-00000017-mai-bus_all
シャープは１４日発表した中期経営計画で、主力の液晶事業の立て直しを経営再建の最大の課題に掲げた。安定顧客との関係強化を進めると同時に、新規の大口顧客の獲得にも努め、液晶工場の稼働率を向上させたい考え。最新液晶パネル「ＩＧＺＯ（イグゾー）」の販売拡大でも収益の底上げを図る方針。ただ新規顧客の獲得などは簡単ではなく、思惑通りに再建が進むかは見通せない。【横山三加子】
「ここ数年のシャープとの決別が必要」。次期社長に就任する高橋興三副社長は１４日、東京都内で開いた記者会見で語気を強めた。しかし、中期計画では事業再編など抜本的な再建策は示されず、液晶事業を「核にする」（高橋副社長）という従来の主力事業の立て直しで再建を目指す方向を打ち出すにとどまった。
シャープの液晶パネルは品質などで優位性があるとされるが、韓国企業など低コストメーカーに押され、収益確保が難しい状況が続いてきた。だが、中期計画では２０１３年３月期に８４６７億円だった液晶部門の売上高を１６年３月期には１兆５００億円に回復させると表明した。
液晶事業の復活には工場の稼働率向上が欠かせない。提携した米アップル向けや韓国サムスン電子向けなど大手顧客からの安定した受注確保が前提となる。高橋副社長はこうした企業との提携拡大に積極的に取り組む方針。約１００億円の出資とパネル供給の契約を取り付けたサムスンとの関係についても、「出だしは大型パネルが重要なポイントだが、ＩＧＺＯなども当然話はしていく」と述べ、提携拡大にも含みを持たせた。さらに「世界中のユーザーに深く入り込む」（高橋副社長）として新規顧客の獲得も目指す姿勢を強調。提携の推進で大口取引先を１３年３月期の６社から１６年３月期には９社まで拡大させる考えだ。
また、液晶の用途もテレビだけでなく、スマホやタブレット（多機能携帯端末）に加え、車載向けなどにも展開することで収益性を高める構えだ。これにより液晶事業の営業損益も１３年３月期の１３８９億円の赤字を１４年３月期には３００億円の黒字に転換する計画だ。しかし、アナリストからは「大口取引先を目標通りに確保できる保証はない」との指摘があり、再建計画そのものを疑問視する声は少なくない。
シャープも液晶頼みの危険性は承知しており、再建策の柱に東南アジアなどでの白物家電の販売強化を据え、タイなど東南アジアを成長市場に位置付け、「売上高で米国を上回る最大エリアにする」（高橋副社長）という。
ただ、成長市場である東南アジアには各国メーカーが続々と進出しており、既に激しい競争が展開されている。「液晶事業を補完する」という程度の意識では、シェア拡大につなげるのは困難だ。
◇リストラ圧力も
主力取引銀行のみずほコーポレート、三菱東京ＵＦＪはシャープに役員２人を派遣し、中期計画達成に向けて監視を強める。２行はシャープへの融資継続などを決めたが、裏を返せば「引くに引けない」状況になった。計画倒れの懸念が強まればシャープに追加のリストラや事業縮小の圧力を強めると見られる。
「最大の懸念だった資金繰りにめどが付いた」。奥田隆司社長は１４日の会見で胸をなで下ろした。２０００億円の転換社債の返済期限を９月に控え、返済資金確保が課題だったが２行は追加融資枠を設定、６月が更新期の協調融資の継続も決めたからだ。ただ、シャープの「経営体制に戦略はなく、統治能力（ガバナンス）も欠ける」（金融筋）ため、２行は常務２人を派遣、新設されたコーポレート統轄本部副本部長として経営管理を強める考えだ。
シャープは財務悪化で金融市場からの資金調達は難しくなっている。２行は中期計画でシャープの収益回復のシナリオを示すことで社債を発行しやすい環境を整えるとともに、増資などによる財務安定化も目指す。ただ、計画の柱に据える他社との提携戦略などが奏功する保証はない。
◇キーワード・シャープの提携戦略
液晶事業の不振などから業績が悪化したシャープ。株価低迷で市場からの資金調達は難しく、他社との資本提携を進めてきた。昨年７月には台湾・鴻海（ホンハイ）精密工業から大型液晶パネル生産の「堺工場」の運営会社に６６０億円の出資を受けたが、シャープ本体への出資（当初予定額６６９億円）はシャープ株急落のあおりなどで今年３月末に立ち消えになった。
一方で、別の提携交渉も進め、今年３月末までに米通信技術大手クアルコムと韓国サムスン電子から約１００億円ずつの出資も取り付けた。米アップル社のｉＰｈｏｎｅ（アイフォーン）やｉＰａｄ（アイパッド）向けに液晶パネルを納入するなど他社との業務提携も進めており、サムスンにも液晶を提供している。
シャープは１４日発表した中期経営計画で、主力の液晶事業の立て直しを経営再建の最大の課題に掲げた。安定顧客との関係強化を進めると同時に、新規の大口顧客の獲得にも努め、液晶工場の稼働率を向上させたい考え。最新液晶パネル「ＩＧＺＯ（イグゾー）」の販売拡大でも収益の底上げを図る方針。ただ新規顧客の獲得などは簡単ではなく、思惑通りに再建が進むかは見通せない。【横山三加子】
「ここ数年のシャープとの決別が必要」。次期社長に就任する高橋興三副社長は１４日、東京都内で開いた記者会見で語気を強めた。しかし、中期計画では事業再編など抜本的な再建策は示されず、液晶事業を「核にする」（高橋副社長）という従来の主力事業の立て直しで再建を目指す方向を打ち出すにとどまった。
シャープの液晶パネルは品質などで優位性があるとされるが、韓国企業など低コストメーカーに押され、収益確保が難しい状況が続いてきた。だが、中期計画では２０１３年３月期に８４６７億円だった液晶部門の売上高を１６年３月期には１兆５００億円に回復させると表明した。
液晶事業の復活には工場の稼働率向上が欠かせない。提携した米アップル向けや韓国サムスン電子向けなど大手顧客からの安定した受注確保が前提となる。高橋副社長はこうした企業との提携拡大に積極的に取り組む方針。約１００億円の出資とパネル供給の契約を取り付けたサムスンとの関係についても、「出だしは大型パネルが重要なポイントだが、ＩＧＺＯなども当然話はしていく」と述べ、提携拡大にも含みを持たせた。さらに「世界中のユーザーに深く入り込む」（高橋副社長）として新規顧客の獲得も目指す姿勢を強調。提携の推進で大口取引先を１３年３月期の６社から１６年３月期には９社まで拡大させる考えだ。
また、液晶の用途もテレビだけでなく、スマホやタブレット（多機能携帯端末）に加え、車載向けなどにも展開することで収益性を高める構えだ。これにより液晶事業の営業損益も１３年３月期の１３８９億円の赤字を１４年３月期には３００億円の黒字に転換する計画だ。しかし、アナリストからは「大口取引先を目標通りに確保できる保証はない」との指摘があり、再建計画そのものを疑問視する声は少なくない。
シャープも液晶頼みの危険性は承知しており、再建策の柱に東南アジアなどでの白物家電の販売強化を据え、タイなど東南アジアを成長市場に位置付け、「売上高で米国を上回る最大エリアにする」（高橋副社長）という。
ただ、成長市場である東南アジアには各国メーカーが続々と進出しており、既に激しい競争が展開されている。「液晶事業を補完する」という程度の意識では、シェア拡大につなげるのは困難だ。
◇リストラ圧力も
主力取引銀行のみずほコーポレート、三菱東京ＵＦＪはシャープに役員２人を派遣し、中期計画達成に向けて監視を強める。２行はシャープへの融資継続などを決めたが、裏を返せば「引くに引けない」状況になった。計画倒れの懸念が強まればシャープに追加のリストラや事業縮小の圧力を強めると見られる。
「最大の懸念だった資金繰りにめどが付いた」。奥田隆司社長は１４日の会見で胸をなで下ろした。２０００億円の転換社債の返済期限を９月に控え、返済資金確保が課題だったが２行は追加融資枠を設定、６月が更新期の協調融資の継続も決めたからだ。ただ、シャープの「経営体制に戦略はなく、統治能力（ガバナンス）も欠ける」（金融筋）ため、２行は常務２人を派遣、新設されたコーポレート統轄本部副本部長として経営管理を強める考えだ。
シャープは財務悪化で金融市場からの資金調達は難しくなっている。２行は中期計画でシャープの収益回復のシナリオを示すことで社債を発行しやすい環境を整えるとともに、増資などによる財務安定化も目指す。ただ、計画の柱に据える他社との提携戦略などが奏功する保証はない。
◇キーワード・シャープの提携戦略
液晶事業の不振などから業績が悪化したシャープ。株価低迷で市場からの資金調達は難しく、他社との資本提携を進めてきた。昨年７月には台湾・鴻海（ホンハイ）精密工業から大型液晶パネル生産の「堺工場」の運営会社に６６０億円の出資を受けたが、シャープ本体への出資（当初予定額６６９億円）はシャープ株急落のあおりなどで今年３月末に立ち消えになった。
一方で、別の提携交渉も進め、今年３月末までに米通信技術大手クアルコムと韓国サムスン電子から約１００億円ずつの出資も取り付けた。米アップル社のｉＰｈｏｎｅ（アイフォーン）やｉＰａｄ（アイパッド）向けに液晶パネルを納入するなど他社との業務提携も進めており、サムスンにも液晶を提供している。
